世田谷区 下北沢駅徒歩1分の心療内科・精神科 メンタルクリニック。土日も診療。うつ病、不安障害、パニック障害、発達障害など心の専門クリニックです。

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Vol.9 なぜ何もしていないのに疲れるのか?

Vol.3の投稿で「くよくよ思い悩むことが増えてきたら、心の調子を崩しそうなサインと受け取ってもよいのかもしれない」とお伝えしました。実際、様々な心配が頭の中を駆け巡っているときは、とても疲れますよね。

では、なぜ人間は悩むと疲れてしまうのでしょうか? この疑問には、いくつかの脳科学の研究結果が答えを与えてくれています。

脳科学の視点から、心のさまよいを考える

私たちがぐるぐる、もやもやと思い悩んでいる時、脳科学の分野では脳の雑念回路である「デフォルトモード・ネットワーク(以下DMN)」が過活動になっていると言われています[1]。 このDMNのエネルギー消費量は私たちが想像する以上に多く、脳全体のエネルギー消費の60~80%とも言われています[2]。 「特に何もしていないのに疲れる」と感じている場合には、この雑念の回路の過活動に疲労の原因が見出せそうです。

うつや不安などによって気分がつらいときは、繰り返しネガティブなことを考え続けてしまう『反芻(はんすう)思考』が意図せずとも生じてしまいます。これを「心がさまよっている」と表現することもできるでしょう。

そのような状態が続くと、気分の不調を長引かせてしまうだけでなく、身体はさほど動いていなくても気持ちの面では大変疲れる、ということにつながりかねません。これについてもまたDMNの過活動との関連性が研究で指摘されています[3,4]

心が疲れないためにできること

ではどのようにしたら、私たちは過剰な「脳のエネルギー消費」を減らしていくことができるのでしょうか?ぐるぐる・もやもやと考えることを減らし、疲れにくくなる方法があれば、ぜひとも身につけたいところですよね。

そのためには、既に皆さんも実践されているかもしれませんが、日ごろから上手にストレス発散をすることや、仕事や学業、生活上の負担を調節することが大切です。また瞑想や呼吸法といった方法を生活に取り入れ、「目の前のことに意識を向け、過去や将来について悩みすぎない」「物事の良し悪しをすぐに判断しない」等といった、マインドフルネスの考え方を学んでいくことも効果的です。

瞑想やマインドフルネスと聞くと「仏教」のイメージがあるかもしれませんが、アメリカではこのメソッドを宗教とは切り離し、医療の現場で一連のプログラムとして提供している医療機関もあります。

次回のブログではこの米国医療の現場で用いられている「マインドフルネスストレス低減法」「マインドフルネス認知療法」について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。(O)

1. Killingsworth, Matthew A., and Daniel T. Gilbert. “A wandering mind is an unhappy mind.” Science 330.6006 (2010): 932-932.
2. Raichle, Marcus E. “The brain’s dark energy.”Scientific American302.3 (2010): 44-49.
3. Sheline, Yvette I., et al. “The default mode network and self-referential processes in depression.” Proceedings of the National Academy of Sciences 106.6 (2009): 1942-1947.
4. Sheline, Yvette I., et al. “Resting-state functional MRI in depression unmasks increased connectivity between networks via the dorsal nexus.” Proceedings of the National Academy of Sciences107.24 (2010): 11020-11025.

2022年5月26日  うつ、不安