Vol.8 「睡眠衛生」を改善する12のヒント
ハーバード・メディカルスクールの睡眠医学部門が発表している「睡眠衛生」、すなわち『良い睡眠を実現するための簡単なコツ』を参考に、12つのポイントを以下にまとめてみました。できそうなものから取り入れてみてはいかがでしょうか。
(参考:https://sleep.hms.harvard.edu/)
1.カフェイン、アルコール、ニコチン、その他睡眠を妨げる化学物質を避ける
アルコールには眠気をもたらす作用がありますが、数時間後には逆に目覚めの回数を増やし、一般的に睡眠の質を低下させてしまうことが分かっています。したがって、お酒は1日1~2杯までにとどめ、就寝前3時間以内の飲酒は避けたほうがよいでしょう。喫煙も、ニコチンで交感神経が優位になりやすいため、夕方以降は控えましょう。
2.寝室は眠りを誘うような環境にする
静かで暗く、涼しい環境は、熟睡を促す効果があります。遮光カーテン、アイマスクなどで光を遮り、朝起きた時に光を浴びて脳に「目覚め」の合図を送りましょう。適切な湿度や部屋の換気に気を配り、快適な寝具を用意し、パソコン、テレビ、仕事道具などを部屋に置かないことも大切です。
3.心地よい眠りのための習慣を身につける
軽い読書は、睡眠の準備として良い方法です。寝る1時間前くらいにリラックスする時間を設けて、睡眠時間への移行を楽にしましょう。入浴(体温が一旦上がった後に下がる、その時が眠りやすい時間帯です)、読書、テレビ鑑賞、リラクゼーションのためのストレッチなども効果的です。
仕事をする、感情的な問題を話し合うなど、ストレスや刺激の多い活動は避けるのがおすすめです。肉体的、心理的にストレスのかかる活動をすると、体内でストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、覚醒作用が強まることがあります。もしあなたが悩みを抱え込みがちなら、それをノートに書き出すなどして、自分の外に出す作業をしてからベッドに入るようにしましょう。
4.本当に眠いときに眠る
なかなか寝付けないとフラストレーションが溜まります。20分経っても眠れない場合は、一旦ベッドを出て別の部屋に行き、読書や音楽鑑賞などリラックスできることをして、十分な疲れをとってから眠るようにしましょう。
5.夜中に時計を見るのをやめる
室で時計を見つめていると、寝ようとしているときや夜中に目が覚めたときに、かえってストレスがたまり、寝つきが悪くなることがあります。時計の文字盤が目に入らない工夫をしましょう。
また、夜中に目が覚め、20分程度経っても再入眠できない場合には、明るい光は覚醒を促してしまうため照明はやや暗めにして、読書や穏やかな気持ちになれそうな音楽を聴くなど、静かで安らげる活動に取り組みましょう。そして、まぶたが重くなり眠れそうになったらベッドに戻りましょう。
6.光を上手に利用する
自然光は、体内時計を健康的な睡眠・覚醒サイクルに保ってくれます。そのため、朝一番にカーテンを開けて光を取り込み、日中は屋外に少し出て太陽の光を浴びるようにしましょう。メラトニンという睡眠に関連の深いホルモンの分泌量などのコントロールが改善します。
7.一貫した睡眠スケジュールで体内時計を整える
毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計が整い、毎晩決まった時間に眠れるようになります。月曜の朝に二日酔いにならないよう、週末の飲酒量や時間は気を付けるようにし、なるべく規則正しい生活を心がけましょう。毎日同じ時間に起きることは、体内時計を整え、睡眠の質を向上させるために最も良い方法です。
8.昼寝は早めの時間に、もしくは全くしないようにする
昼寝をするのが日課になっている人は多いでしょう。しかし、寝つきが悪い、夜中まで眠れないという人は、午後の昼寝が原因のひとつかもしれません。どうしても昼寝をしたい場合は、午前中、短い時間などと、上手に区切ってするのが良いでしょう。
9.夜食は軽めに
夜10時のような遅い時間帯に思い切り食べるのは、不眠の原因になる可能性があります。夕食は就寝の数時間前に済ませ、消化不良を起こしそうな食べ物は避けましょう。
10.水分摂取の工夫
体調管理のために適量の水分を取ることは大切ですが、夜中にトイレに行きたくなるようなたくさんの量、就寝間際の水分補給には注意しましょう。
11.運動は早めの時間帯に
運動は、適切な時間帯に行えば、寝つきを改善させ熟睡するための助けになります。運動は、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を促し脳の覚醒メカニズムを活性化させる働きがありますので、少なくとも寝る3時間前には終えるようにしましょう。
12.改善しない場合は相談を
上記の睡眠改善のためのヒントの中には、習慣として簡単に取り入れることができるものとそうでないものがありますが、継続することで安らかな眠りを得られる可能性は高まります。
ただ、すべての睡眠障害が簡単に治るとは言い切れず、睡眠時無呼吸症候群、レストレスレッグス症候群、ナルコレプシーなどの専門的な治療を要する睡眠障害や、その他の疾患の影響などによる睡眠障害が隠れている可能性もあります。ご自分なりの工夫をしても眠りに関する心配や問題が改善されない場合は、医師に相談することをお勧めします。
近年は依存になりにくいタイプの睡眠薬も増えてきています。睡眠の相談をするとお薬をたくさん処方されるのではないかというご心配は無用です。まずはどのような治療をご希望されるのか、率直にお話しいただけますと幸いです。(O)