Vol.11 インターネット上の情報との付き合い方

心配でたまらないとき、眠れないときなど、まずは「病院に行く前に自分で何とかしたい」と思われることでしょう。自分はどんな状態なのか、インターネットで検索をして様々な情報を入手したり、市販の睡眠薬を試したりする方が多いようです。そのような流れでこのブログにたどり着いてくださった方もいらっしゃるかもしれませんね。

本ブログでは、これまでに睡眠障害への対策としての「睡眠衛生を改善するヒント」や、心配事が頭の中をぐるぐるしている状態に対して「マインドフルネス」が効果的であることなどをご紹介してきましたが、少しでもセルフケアに興味を持っていただくことはできたでしょうか。

セルフケアの次の段階

とはいえ、睡眠衛生の様々な工夫やマインドフルネス瞑想などに取り組んでも、しぶとい不眠や不安が続いてしまうこともあります。そのような場合は、上記のようなセルフケアの次の段階を想定していくことも必要かもしれません。つまり、その辛い心配や不安の背景に何らかの精神疾患や障害と言われるものが潜んでいないか、と考えていくわけです。

不安や不眠は、あらゆる心の不調に伴って現れる代表的な症状でもありますので、この2つがあることだけで病気を診断することは難しいのですが、たいていは気分の落ち込みや、将来への悲観的な考え、自分を責める気持ち、考えすぎだと分かっているのに心配してしまう、人間関係がうまく行かない、といった風に不安・不眠以外の困り事も存在していることが多いので、専門的な知識のある医師による診察が必要になってきます。

うつ病や適応障害の方が不安になりやすいということは皆さんもご存じかもしれませんが、それ以外にも様々な病気がありますので、本ブログでも様々な疾患についての情報提供を引き続き行っていく所存です。

ときには「検索」をお休みしてみるのも

ただ、もし『自分の状態がよくわからない』と思っていらっしゃるのでしたら、一旦、インターネット検索をお休みしてみるのも1つの案です。なぜなら、検索をしても自分がどのような状態かを判断することが難しければ、様々な情報が目に入ることで混乱が生じやすくなり、不安が増大してしまうことが多いからです。

外来でも患者様から「私は病気になったのですか？」「病名は？」というご質問をいただくことがしばしばあります。もちろん、中には典型的な症状が出ており、診断基準を満たす状態となっている方もいらっしゃいますが、お一人お一人の状況はとても多様なため、ぴったりと基準を満たさない場合も多々あります。そのような状況を自分で判断するのはとても難易度が高いことです。

そういった時にはより客観的な視点で、「病気なのかどうか」という視点のみではなく、「どのくらい困っているのか」「生活への支障は？」「周囲の方への影響は？」といったことを総合的に見ていく必要があります。そして場合によっては、病気に準じた治療、あるいは本格的な病気にならないために先手を打っていくような選択が必要なこともあります。

インターネットはとても便利なもので、様々な情報が色々な場所で提供されており、手軽に知識を手に入れることができます。しかし不確かな情報や皆さんの不安を煽るような情報が紛れ込んでいることも事実で、十分な注意が必要です。

私たち専門家は、患者様の状況や状態を客観的かつ適切に判断し、その上で最も効果的な対応をしていくことが大切であると考えています。皆さまのお話を直接お伺いできる診察の場は、とても貴重な時間です。

これからこのブログにも病気やお薬の情報を掲載することがあるかもしれませんが、あくまでも1つの参考資料としてお考えいただき、ネット上の記事などがご自分に合っている情報なのかどうかを判断することが難しい場合には、検索に頼りすぎないで直接ご相談くださると大変有難いです。

こういった文章だけではお伝えしきれないことや対面でお話してこそわかることこそが、メンタルの治療においては重要であることが少しでも伝われば幸いです。（O）

2022年6月10日　 うつ、不安