世田谷区 下北沢駅徒歩1分の心療内科・精神科。うつ病、統合失調症、不安障害、認知症など心の専門クリニックです。

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水中毒

最近スタッフから何故か水中毒について書けと指令が来たので、少し書いてみます。
通常人の飲水量は一日3リットル以内、それを超えるといわゆる多飲polydipsiaと定義され、注意が必要となります。繰り返すことで低浸透圧性低ナトリウム血症 hyponatremia with a low plasma osmolalityを生じ、いわゆる水中毒water intoxicationといわれる状態となります。
この浸透圧の低下スピードが速いか遅いかで急性か慢性かに分かれ、治療の緊急度も変わってきます。急性の場合細胞外液から内液への水の移行が起こり、脳細胞容積が増大し、頭蓋内圧亢進から嘔気、混乱、頭痛、さらにけいれん、呼吸停止、脳幹ヘルニアなど、重篤になれば死亡する場合もあります。慢性の場合は適応するために細胞内のイオン、オスモライトなどを減らして細胞内浸透圧を下げることで脳浮腫は軽度にとどまり、一見無症状に経過する場合もありますが、慢性水中毒の場合広範囲な脳の容積が減少するなど中枢神経系のダメージが指摘されており、海馬、扁桃体、島、側頭葉内側などに容積減少が報告されていますし、ベルギーで行われた症例対象研究で、無症候性の低ナトリウム血症は転倒の危険因子であると報告されています。

そもそも正常な腎機能を持つ人間の最大希釈尿は50mOsm/kg程度、つまり最大希釈したとしても尿からは浸透圧に寄与するNaが失われていきます。また一般的な食事をとっているとして溶質負荷は600mOsm程度と仮定すると尿量=溶質÷尿浸透圧で約12Lが一日の排泄限界、それを超える飲水はさらに低浸透圧性低ナトリウム血症を進行させます。

精神科において心因性多飲psychogenic polydipsiaはよく見られる症状であり、低浸透圧性低ナトリウム血症においてはまず最初に鑑別する必要があります。なぜなら治療法が他の疾患と大きく違うためです。
日常生活の聴取、ストレスの有無など確認し、尿浸透圧、尿比重などをチェックすることで診断します。対処法はまず水制限ですが、外来においてこれは大変難しい課題です。
体重を計ることすら拒否されれば無理に調べることはできません。

低ナトリウム血症を急激に補正することは危険です。脳細胞内の浸透圧が低張な状態で細胞外液が急に高張になるため細胞外への水の移動が急激に生じ細胞内脱水から浸透圧性脱髄症候群osmotic demyelination syndromeを起こし、弛緩性麻痺、構音障害、嚥下障害、閉じ込め症候群など重度障害をもたらします。

慢性低ナトリウムの治療においても重篤な神経症状がみられる場合、症状が消失するまで比較的急速に5mEq/L程度の補正を行い、その後24時間で合計約10mEq/L以内、その後24時間で約8mEq/L以内の補正とするなど慎重に補正を行います。
緊急補正においては3%食塩水など高張食塩水を用いることが多く、3%食塩水におけるNaは約0.51mEq/mlなので,
3%食塩水投与量(ml)=(補正分NaのmEq/L)×体液量(体重×0.6)÷0.51
=(補正分NaのmEq/L)×体重×1.2
と投与量に対する血漿Na濃度の上昇量が計算しやすくもあり、緊急補正に適しているようです。

慢性の水中毒の予後は不良です。水中毒の死亡は、統合失調症の死亡事例の20%程度、多飲のあるなしで約10年程度早く多飲者は死亡するという報告もあるようです。
皆さん過剰な飲水は避けましょう。

2018年12月15日